秋田・米代川流域

秋田杉は本来天然の杉のことを指していたそうだが、近年は枯渇してきたから、人工林のものもそう呼ぶようになっているようだ。 高齢級の大きな杉はどこにでもあるわけではなく、スポット的に分布しているようだ。道路沿いで見かけるすぎはどれもせいぜい40cm程度の杉で、手入れもよくされているとはいえない。低い山に杉だけがびっしりと生え、その黒い梢がどこまでもダラダラと続いているのがこの地域の景観だ。川沿いの平地にポツポツと集落がある。私が現地に行った時は冬になろうとする時期だったから日が刺すことはほとんどなく、どんよりとした日本海らしい鼠色の空が重々しく地面を押し付けているようだった。 臨床には笹が生えている。広葉樹や林床の小低木の具体的な種名を記録することは私の力不足でできない。面白いのは、切り株が高いことだ。おそらく積雪機に伐採しているのだろう。ちなみに、美麗なマイマイカブリの亜種であるキタカブリはこうした高い切り株の樹皮下で越冬していることが多い。

スポット的に分布する天然秋田杉の群落のうち、私が実際に見たのは上大内沢国有林の小班に分布する群落である。高齢級の杉林は、雰囲気が全く異なる。直径2m近くあろうかという杉が真っ直ぐに屹立し、列柱回廊のような整然とした空間となる。